熊本|緑川ダムの堆砂でアサリが復活 福岡工業大学・田井研究室が環境大臣賞受賞 2025年9月
全国のダムで深刻化する「堆砂」問題を水産資源復活に活かす研究が注目を集めている。福岡工業大学社会環境学科・田井研究室は、熊本県の緑川ダムに堆積した土砂を有明海の干潟に運搬・散布し、アサリの生息地として活用する実証研究を実施。その成果が高く評価され、「令和7年度 河川基金研究成果発表会」において環境大臣賞を受賞した。
ダムの堆砂は洪水時の氾濫リスクを高め、取水障害や貯水容量の減少を引き起こす深刻な課題となっている。緑川ダムでは熊本地震以降の崩壊土砂流入により堆砂が急速に進行し、2023年度時点で堆砂容量は93.6%に達していた。これまで堆砂は放流や処分地への搬出で対応してきたが、環境負荷やコストの問題が課題とされてきた。

田井研究室は堆砂土を緑川河口の干潟に覆砂し、アサリの生息砂床として利用する実験を行った。調査の結果、堆砂は干潟に安定して定着し、アサリの成長速度は従来比で最大1.6倍に向上。さらに、稚貝の定着性や呼吸環境の改善にも効果が確認され、半年後も覆砂が残存することが示された。
研究の意義と展望
「課題」であった堆砂を「資源」として活用し、水産資源の復活に結びつける着想は世界的にも例のない試みとされる。研究は地元の川口漁協・緑川漁協、熊本県環境立県推進課の協力のもと実施され、養殖ノリなど地域漁業への影響を考慮しながら進められた。今後は「なぜ堆砂環境下でアサリが顕著に成長したのか」を解明し、成長促進のメカニズムを体系化することで、有明海の資源回復に資する知見の確立を目指す。
研究者プロフィール
福岡工業大学 社会環境学部 社会環境学科
田井 明 教授
研究分野:環境水理学、防災工学
Event Summary for International Visitors
Professor Akira Tai’s laboratory at Fukuoka Institute of Technology has developed a pioneering project to reuse sediment from the Midorikawa Dam in Kumamoto. By transporting accumulated dam sediment to tidal flats in the Ariake Sea, the study demonstrated a 1.6-fold improvement in clam growth, turning a flood risk into a valuable marine resource. This innovative research won the 2025 Minister of the Environment Award, and aims to provide new insights for restoring fisheries in the Ariake Sea.


