SCOL&S:出ていく人を阻止するより、出た人が戻ってきたくなる、また戻ってきたら歓迎できるような街に

きっと、みんなが持っている「自分の街を住みやすくしたい」という気持ち。

一度は地元を離れた若者たちが、自分の故郷に帰り、見つめなおし、奮闘する。
そんなワンシーンが多久でも繰り広げられている。

多久駅。

一日の利用者数がたった600人程度の小さな駅に、突如現れたインテリア雑貨ショップ「SCOL&S」(読み:スコルス)。
立ち上げの中心となった、建築士の笹川俊一さんとデザイナーの藤井啓輔さんにお話を聞いてきました。

SCOL&S

店舗オープンまで4ヶ月しかないという状況から

– 笹川さんと藤井さんは、最近多久に戻って来られたとお聞きしました。

笹川:5年くらい前に福岡から帰ってきました。

藤井:わたしは、昨年埼玉から移住しました。

– ふたりは地元の同級生ですか?

笹川:いえ、実は去年の8月に知り合ったばかりで、まだ歴は浅いんです。

藤井:いまでは家族ぐるみの付き合いです。

– そんなお二人が、スコルスの立ち上げに携わった経緯を教えていただけますか?

笹川:福岡から地元の多久に戻り、日々の生活の中で、街の過疎化が目につくようになります。古くは炭鉱で栄えた街でしたが、その後は人口も減少の一方で、私たちの子供の頃と比較しても、さびしさを感じる街になりつつありました。

もちろん、それを見ないふりをすることも出来たのですが、なにか街に還元したいと考えている時に、スコルスが入居することになるテナント募集の情報をいただきました。

この多久駅直結型の交流センターは、何年も前から計画されたプロジェクトでしたが、この一角のテナントが埋まらない。それなら、自分でやってやろう!という気持ちで出店を検討しました。実のところ、スコルスの立ち上げが決定したのは、店舗オープンまで、あと4ヶ月しか無いという状況で、不安も多い環境でしたが「やってやる!」という強い気持ちで着手しました。

藤井:この4ヶ月も、店舗の設計のみに時間を割くのではなく、二人の意識をすりあわせることに重視し、コンセプトづくりを慎重に行いました。そこで生まれたコンセプトが、Shift concept of life & stylingです。この頭文字がSCOL&Sとなります。

SCOL&S

どこか他人ごとなんです。田舎の私たちには関係ないと。

– もともと雑貨店のノウハウをお持ちだったのでしょうか?

笹川:わたしは、建築設計の仕事をしているため、店舗のデザインまでは可能です。ただ、雑貨に関しては素人でした。そこを藤井さんに補ってもらうようなスタンスで、プロジェクトを進めました。

藤井:多久でも、流行のライフスタイルやアイテムの情報は、WEBや雑誌をとおして簡単に手に入ります。

だけど、どこか他人ごとなんです。
田舎の私たちには関係ないと。

なんだか、そんな思考を打破したいという気持ちもあり、おもいっきりオシャレなお店にしようと思いました。

いつも使うものはこだわって選びたい。自分たちらしい暮らし、新しい生活を意識していただけるといいですね。

SCOL&S

むきだしの天井を見て「まだ工事中か?」

– この施設は、多久市によって運営されているとききましたが、そのあたりのコンセプトは伝わりましたか?

笹川:最初はむずかしかったですよ。

店舗の天井はむき出しで「あえて」配管などが見えるようにしています。
これはデザイン性もありますが、天井が高くなり空間を広く感じることができます。

でも、このむき出しの天井を見て「まだ工事中か?」と聞かれたことは何度もありました(笑)

藤井:施設は市の持ち物ですし、最終決定権は世代がいくつも上の方が持っています。自分たちでどんなに良い企画をもっていったとおもっても、彼らの一言で計画が変わってしまうこともあります。

そこを調整するのも仕事ですし、信頼して任せていただくような立場になることも重要だと思います。先輩方に敬意を払いつつも、きちんと自分たちの意見は伝えるべきだと考えています。

スコルスを実績として、自分たちの意見やアイデアを聞いてもらえるようになれば、ぼくらが目指すまちづくりに近づけるんじゃないかと思ってます。

笹川:最近は少しづつ意見を聞いてくれるようになってきたと感じています。

SCOL&S

戻ってきたら歓迎できるような街へ

– 「ぼくらが目指すまちづくり」とは

笹川:出ていく方を阻止するより、出た人が戻ってきたくなる、また戻ってきたら歓迎できるような街になってくれればと思っています。

都会で手に入れた様々な経験を、自分の地元に還元する。そうすると、多久は勝手に住みやすく、すてきな街になると思います。

藤井:そのために、最低限の土壌をいま居る僕らでつくっていきたい。

編集より

「雑貨屋さんをつくりたいだけなら、都会につくります。」そう言い切る彼らのスコルスは、オープンしてまだ2ヶ月。
たまには、いつもと違う駅で降りて多久の息吹を感じてみよう。

TEXT:TORIYA

店舗情報

SCOL&S(スコルス)
日々を丁寧に、かたち創るお手伝い。
住所:846-0002 佐賀県多久市北多久町大字小侍1016-2
電話:070-5488-2921
時間:10:30〜19:00(日曜 10:30 〜 18:00)
休日:毎週月曜日 と 第三日曜日
WEB:http://scols.jp/

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