伝統工芸を地域の芸術家がサポート。コロナ禍に生まれた新しい伝統工芸のデザイン

塗られるお福さん
福岡

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、延期となった「博多祇園山笠」

これに携わる伝統工芸「博多人形師」によるクラウドファンディングに、福岡にゆかりのあるの芸術家たちがサポートの動きを見せました。

伝統工芸の表現に、異なる分野の芸術家が呼応する形で、新しいデザインが生まれています。

博多祇園山笠

毎年100万人近い観衆があつまる「博多祇園山笠」。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のために、翌年への延期が発表されました。この延期は「山笠を中心に生きてきた」地元の人たちに、大きな影響を与えました。そのひとつが「山笠」をつくる博多人形師です。

毎年7月の山笠に向けて、新作人形の製作にあたっていた博多人形師ですが、祭りの延期によって、本年の人形製作はすべて延期となりました。

博多祇園山笠の起源は、鎌倉時代(1241年)に博多で疫病が流行した際に、承天寺の聖一国師(しょういちこくし)が、疫病退散を祈願してまわったことが発祥と伝えられています。

そこで、博多祇園山笠の由縁になぞり、博多人形師たち新型コロナウイルス終息を祈願する(祈願人形)をあらたに製作するというものです。

塗られるおふくさん

博多人形を代表するデザインのひとつであり、縁起がよいといわれる「お福さん」。
これに新たに命を吹き込み「祈願人形」として「新型コロナウイルス終息を祈願しよう」というものです。

職人たちが手掛けたお福さん

あらたにデザインされたお福さんは3種類、いずれも疫病退散に関連するもので、博多人形らしいしなやかさと繊細さを持ち合わせたものです。

そして、このお福さんですが、様々なコラボレーションが取り組まれたデザインでもあります。

空港会社のお福さん

有名企業とのコラボ

過去には地元の企業や学生とのコラボレーション作品を発表し、多くの話題を集めてきました。そこで、一般にデザインを募ったところ、地元の芸術家が反応しはじめたのです。

複数の地元芸術家が、自分たちの画風の特色を生かした「お福さん」を自由な発想で発表しています。


坪山 斉

作品名:ミライさん
坪山 斉(画家)

高彩度な色でグラデーションを施し、3Dプリンターの光造形を思わせる未来的な博多人形をイメージした。

1981年 宮城県生まれの画家。独特の空間認識や配色感覚を持って、描かれた絵画作品は国内外で評価されています。シリーズ毎に設定されたテーマを徹底的に分析して、新たな解釈の絵画として制作発表を行なっています。


https://www.instagram.com/hitoshi_tsuboyama/

坪山小百合

作品名:藍
坪山 小百合(画家)

日本に馴染みのある色「藍」がコンセプト。インディゴなど5色の青色を使い、凛とした博多人形を表現した。

1983年 福岡県生まれ。主に人や、花や水などの自然物をモチーフとして作品を制作する画家。油絵具や水彩絵具で描かれた画面からは、濃淡のはっきりしした対象物の美しさと、その隙間に微かに見える光の存在を感じることができます。


https://www.instagram.com/sayuritsuboyama/

小島拓朗

作品名:福博であい橋
小島 拓朗(画家)

福博であい橋から見た夜の中洲の景色をイメージに描きました。

1994年佐賀県生まれの画家。彼が描く荒廃した建物や、独特の視点で描かれた都市の風景には、人の気配が見えない。淡々と描かれたビル群、その時間が止まったように見える風景には、潜在的に人が持つ都市の記憶が確かに描かれています。


https://www.instagram.com/kojima_takuro/

神戸智行
風神。雷神

作品名:新型コロナウイルスなんてあかんべー!
神戸 智行(画家)

世界中から、新型コロナウィルスの1日でも早くの終息を願います。博多総鎮守の櫛田神社の拝殿破風には、
あかんべーをした木彫りの風神雷神が飾られています。この風神雷神に新型コロナウィルスを消し飛ばしてもらおうと願いを込めて描きました。

1975年 岐阜県生まれ。国内外で活躍する日本画家です。太宰府天満宮アートプログラムでの滞在をきっかけに、2014年から福岡に移住。現在、太宰府天満宮で襖絵の大作の制作を行っています。自然や生き物が描かれた「鈴懸」の季節の美しい掛け紙は、きっと一度は目にしたことがあると思います。


http://hirota-b.co.jp/artist/cat-6/

池田健

作品名:新たな閃き/ N E O I N S P I R A T I O N
池田 健 / KEN IKEDA (ARTIST / ART DIRECTOR)

この作品は2 0 2 0 年 現在の日本/ J A P A N をイメージし、その伝統文化に脈々と流れる 血液、D N A そしてこれから起こる変革( 直感や閃き) をテーマに製作しました。

1979年生まれの池田健さんは、福岡市内を拠点に、アーティスト・アートディレクターとして活動。wkw airplant名義で描かれた大きな壁画やアートワークは、市内の至る所で見ることができます。一方で工芸的なプロダクトとのコラボレーション、ロゴやグラフィックのデザインワークなど、ジャンルを横断して、精力的にクリエイティブな活動をしています。


https://www.instagram.com/wkw_airplant/

田中武

作品名:博多熱子人形
田中 武 (画家)

福岡の人々は勇ましく、少し荒々しいけれど人情味溢れる気質を持っています。福岡は熱い!

田中武さんは1982年生まれの画家。日本美術に関する知識を深めて研究する一方で、独特な視点で現代社会を描いています。その圧倒的な描写力と独自の思想を融合させて、比類無きスタイルの絵画作品を制作しています。


http://takeshi-tanaka.net/

田中千智

作品名:霧、晴レル
田中 千智 (画家)

今は霧がかかっていても、いつか晴れの日が来るという想いを込めて描きました。
普段は油彩画を描いているので、今回の博多人形も油絵具で色を施しました。

1980年生まれの田中千智さんは福岡市にアトリエを構え、作品制作を行っています。幼少期過ごした故郷の原風景から、黒い背景が特徴的な油彩画を描いています。現在では展覧会やアートフェアなど国内外で作品を発表して、活躍しています。


https://www.instagram.com/chisato.tanaka_painter/


コロナ禍において、自粛ムードによるマイナスのイメージが多く語られますが、新しい価値観として「互助」の取り組みが注目を浴びるようになりました。

最もクラウドファンディングが最たる例で、これをキッカケにコミュニティーの再確認や、あたらしい出会いも生まれています。

地元の伝統工芸に携わる当事者たちの活動を、普段異なる分野の作家がサポートすることで、新しいデザインが世の中に生まれました。
守るだけではなく継承していく伝統工芸を、当事者だけでなく街ぐるみでサポートする美しい光景が福岡で生まれていました。

▼クラウドファンディング:博多祇園山笠に生きる博多人形師が、新型コロナ終息祈願に立ち上がる!

https://camp-fire.jp/projects/view/284455

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