クラブ史上最大の壁に挑むロアッソ熊本。新市街に鳴り響いたHIKARI
J1昇格へ挑む9回目のシーズン、ロアッソ熊本は下馬評をくつがえす好スタートで、一時は首位に立ちました。
しかし、今は相手ゴールが遥か遠くに感じ、ゴール前へボールを持ち上がるのが精一杯な状況です。
「正直、勝点3、勝点1でも熊本の皆さんに届けたかったですし、1ゴールでも、シュート1本でも、そういうものを届けたかったという思いはあります。」(J’s Goalより)
チームのリーグ戦復帰試合。ジェフ千葉に0-2で敗れた後、巻誠一郎選手が涙をこらえながら語った言葉です。
ロアッソの選手らは今、とてつもなく大きなものを背負い、試合に臨んでいます。
たった1ゴール。決まった瞬間、彼らの身をどれほど軽くしてくれるでしょうか…。
「県民に元気を」
「子供たちに夢を」
「熊本に活力を」
クラブが掲げる理念を遂行するために、高い高い壁を越えようと、果敢に立ち向かっています。
復帰後2戦目となった水戸ホーリーホック戦。本来ならばホームのうまかな・よかなスタジアムで行われる予定でしたが、建物の安全確認が完了していないということで、代替え地・日立柏サッカー場(千葉県柏市)での開催に。
本拠地の熊本では、サンロード新市街に特設のパブリックビューイング会場が設置されることになり、多くのサポーターが詰めかけました。
中継が始まる少し前、サポーターによる「HIKARI」が新市街に鳴り響きました。
HIKARIはロアッソ熊本の応援歌の中で最も気持ちが高ぶる歌。毎試合、サポーターが手をつなぎ歌うのを、選手らは肩を組みながら聴き、ふつふつと湧き上がる闘志を胸にピッチへ向かいます。
スタジアムでこの合唱を聴くと、その声の迫力やファン&サポーターが一つになる光景に、いつも胸が熱くなります。
それにしても、一般客もいる商店街で想像もしていなかった大合唱。今回ばかりは、HIKARIを皆で歌うことを提案した人と承諾した人、それぞれの思いを想像して胸が熱くなりました。
HIKARIで現地とつながった瞬間。#roasso pic.twitter.com/GccCYcOGFt
— ウメダユースケ (@sponsoccer) 2016年5月22日
その後、キックインセレモニーで登場した、スピードワゴンの小沢一敬さんの姿がスクリーンに映し出されると、大歓声が沸き起こりました。
NHKの番組でロアッソ熊本のクラブ業務を体験された小沢さんは、その後もロアッソ熊本との縁を大事にしてくださっています。熊本にJクラブがあることで生まれた絆。この日は、芸人仲間と一緒にスタジアムで募金活動などをされたそうです。
日立柏サッカー場で今日はロアッソのホームゲームです!まだチケットありますので応援に来てね! pic.twitter.com/1xauFsOhnZ
— 小沢一敬 (@ozwspw) 2016年5月22日
スピードワゴンの小沢一敬さん、2012年のテレビ番組でロアッソ熊本のスタッフとして1週間共に仕事をしたつながりで、今回は「熊本の為に何かできることはないか」ということから、多くの仲間と共に来場してくれました。 pic.twitter.com/M7qlAblDwg
— ロアッソ熊本(official) (@roassoofficial) 2016年5月23日
また、現地では水前寺清子さんがスタジアムを大いに盛り上げたようです。
多くの方々がチャリティ活動に参加していただきました。
熊本出身の水前寺清子さん、ロアッソ熊本のHIKARIセレモニーに選手達と一緒に参加していただきました。また、試合前には「365歩のマーチ」を歌い、スタジアム中が一体となりました。 pic.twitter.com/zpqXuJtAli— ロアッソ熊本(official) (@roassoofficial) 2016年5月23日
実は、HIKARIも水前寺清子さんが歌われている曲。地元が生んだスターの曲で、地元のスポーツクラブを応援するって、なんか良いですね。
試合は両者譲らず0-0のまま試合は終盤へ。しかし、先手を取ったのは水戸ホーリーホックでした。後半36分に失点を喫したロアッソは、なんとか1点を、と攻撃を仕掛けます。
が、報われることなく試合終了の笛。
前の試合に続き、今のチーム状況で1点を取る、ということの難しさを見せつけられる結果となりました。
最後まで走り抜き、苦悶に満ちた表情を浮かべる選手たちの姿がスクリーンに映し出されると、大きな拍手が送られました。ロアッソの選手の3割は熊本県出身です。震災後の2試合で、6人の地元出身選手がピッチに立ちました(岡本賢明、上村周平、黒木晃平、嶋田慎太郎、畑実、そして巻誠一郎)。
同じ九州内のJ1クラブ・サガン鳥栖やサッカーが盛んな長崎(V・ファーレン長崎)ですら、一人も地元生まれの選手がいないことを考えると、その多さがうかがえます。
被災した選手らは、それを言い訳にすることなく、熊本の人々を一人でも多く笑顔にするためにピッチに立っています。
試合後には、熊本・水戸、両チームの選手、スタッフ全員で感謝の気持ちを込めて場内を一周し、スタジアムにご来場いただいた全ての方々から温かいご声援をいただきました。皆様の赤くて熱い声援、誠にありがとうございました。 pic.twitter.com/yC2NJRaMmP
— ロアッソ熊本(official) (@roassoofficial) 2016年5月23日
6月のホームゲーム2試合は、サガンのホーム・ベストアメニティスタジアム(ベアスタ/佐賀県鳥栖市)で開催されることが決定しました。
ロアッソがベアスタで試合をするのは、2011年のサガンとの対戦以来。2-2のドローで勝ち点1を得たサガンは、この試合でJ1昇格を決めました。
そして試合後、ロアッソサポーターからこんな横断幕が掲げられました。
サッカーの世界では普通、地理的に近いチームの間にはライバル感情が芽生えるもの。ですが、サガンとロアッソの関係に至っては極めて友好的です。
ロアッソがJ1に昇格し、ベアスタに乗り込んでくる時、ダービーマッチとは違った盛り上がりが見れるのを楽しみにしていました。が、まさかこんな形でロアッソがベアスタに来ることになるとは。
試合には、ロアッソを応援するために熊本からだけでなく、佐賀をはじめ九州各地からたくさんの人が応援に駆けつけるでしょう。
熊本の皆さん!
来月8日と19日は、九州全土でロアッソを勝たせましょう!!
ロアッソ熊本 今後のホームゲーム日程
●明治安田生命J2リーグ 第15節
「ロアッソ熊本 vs FC町田ゼルビア」
日時:5月28日(土)19:30
会場:ノエビアスタジアム神戸
●明治安田生命J2リーグ 第17節
「ロアッソ熊本 vs ツエーゲン金沢」
日時:6月8日(水)19:00
会場:ベストアメニティスタジアム
●明治安田生命J2リーグ 第19節
「ロアッソ熊本 vs カマタマーレ讃岐」
日時:6月19日(日)18:00
会場:ベストアメニティスタジアム
大きくて見やすいスクリーン。スカパー!さんと日本スポーツ振興センターが協力してくださいました。
V・ファーレン長崎やモンテディオ山形、ベガルタ仙台など、Jリーグサポーターからのメッセージが書き込まれたメッセージ。
ロアッソのグッズも販売。
復興支援グッズは完売になっていました。
うまスタでおなじみのスタグルが出店。
熊本といえばやっぱり馬肉と赤牛! 「ウマめし」という混ぜご飯と赤牛の焼肉をいただきました。
食事ができるスペースも確保されていました。
中継前に試合の展望について話す、元ロアッソの選手で現クラブスタッフの矢野大輔さんと、元日本代表で水戸でもプレーしていた鈴木隆之さん。
キックオフ30分前には、シートがサポーターで埋め尽くされました。
1点を狙いに行くロアッソ。通りがかった人も戦況を見守りますが…。
試合終了後、悔しさと不甲斐なさに涙を浮かべる巻選手を、じっと見つめるサポーター。
ロアッソ熊本がリーグ戦に復帰した5月15日は、奇しくも1993年にJリーグが開幕したのと同じ日でした。